Saturday, January 13, 2007

周回遅れ

去年の7月のブログのエントリにコメントをつけるなんて、なんというかブログ界の最前線(なにそれ)から周回遅れという感じが否めないが、しかしこれは紹介しなくてはいけない。

大隅典子の仙台通信 : 人種の差

個人的にいうとこの手の「取り扱い危険」の話題をこんなカジュアルな手つきで語れるなんてちょっと信じられない気がする。
「集団AとBの形質xについての違いには遺伝的基盤がある」という言明は、読者の中ではすぐに

「AとBのメンバーあいだにはxについて超えられない差がある」とか
「AとBのメンバーのあいだにみられる差をなくすことはできない」とか
「だからAとBのメンバーにいまみられる違いは全部遺伝的な差からきている」とか
「だからBのメンバーをxについて向上させるよう施策を立てなくてもよい」とか
「だからBのメンバーにxを向上させるようお金をかけるのは無駄だ」


といった推論(というか連想か)を起こしやすい。そしてそうした連想にもとづく行為が悲惨な結果を生み出しがちなのはもう明らかだと思う。

これは、「だからAとBの違いの遺伝的基盤について語るな」とか「『AとBのあいだに遺伝的違いがある』という仮説ははじめから排除せよ」ということではない。そうではなくて、読者が陥りがちな誤解を先回りして防ぐことが重要だということである。しかし大隅さんは、そういった危険にあんまり頓着していない感じである。それはやっぱりちょっとまずい。